あいちトリエンナーレに行ってきました。メイン会場が5つあって、それぞれコンテクストに特徴があり、とてもバラエティーに富んだ美術展になっていました。青木さんと杉戸さんの名古屋市美は、嫌悪してしまうような建物でも嫌うことなく愛でることからスタートする、その姿勢が見事に結実していて、普段はとても 厳格な美術館なんだろうけれどそこに厳格のげの字もなく、子供たちが無邪気に走り回るほど健やかな建物にリノベーションされていました。美術展に建築家が作家として参加する際にぶつかる「何をもって建築的成果を美術作品とするか」というジレンマに対して、空間の質をリノベーションする、その行為自体を美術作品とすることはむしろ、美術展での建築家の自然な振舞いに感じられました。2011年春に青森県美で開催される予定で中止となった『はっぱとはらっぱ』のスタディの賜物。次の展開が楽しみです。納屋橋会場は、映像作品がどれもおもしろく、そう思っていると突如裏の空間に青木野枝さんの作品が現れたりと、元ボーリング場でその後住宅のモデルルームとして使われていた建物がうまく使われていました。長者町会場では、山下拓也さんとケーシー・ウォンさんがよかったです。芸術センターは、いわゆる普通のホワイトキューブで、そういう意味でより作品自体の強度が問われていたように思いました。そのなかで、米田知子さんと宮本佳明さん、ニコラス・ヴォストさんは抜きん出ていたように思います。岡崎会場は、少し距離があることもあり敬遠しがちになりますが、ここを行かずしてはならない会場です。ショッピングセンターであるシビコでの展示は、どの作家も平らに広い空間をみごとに使いこなしていて、それぞれの作品自体もそうですが、会場全体でのバランスが秀逸でした。特に志賀理江子さんの展示は、大きな写真パネル自体で展示空間を構成し、建築的巧みさをもった展示だと感じました。その他では、アリエル・シュレジンガーの二律背反的作品がわかり易さなかにも複雑性を孕んでいて、興味深い作品でした。駆け足でめぐった2日間でしたが、あいちトリエンナーレは都市で開催することのメリットをうまく取り込んでいて、美術作品がもつさまざまな側面がバランスよく感じられる美術展でした。

あいちトリエンナーレ

Date : 2013.8.20