浅子佳英氏の自邸「GRAY」の1階の手付かずの場所にインストールする、居室ともユーティリティとも呼べない絶妙な大きさである7.5帖のキッチン、トイレ、バスルームの3つの部屋からなる住宅の計画である。 ユーティリティとしてはかなり大きな3つのヴォリュームは、住宅としての機能を充実させるだけでなく、二世帯住宅や独立した賃貸住宅としても利用できる多層的な状況をつくりだす。

3 UTILITY HOUSE in GRAY

Date : 2016.12
Type : House
Location : Meguro, Tokyo
Floor : 45.20㎡
Image : mtka

日本を代表するコンテンポラリーアートギャラリーである小山登美夫ギャラリーの内装設計である。通常の白く冷たいギャラリーではなく、小山さんのキャラクターにあった温かみがあり、物語性のある展示ができるような空間をめざした。インテリアを、ヴォリュームのサイズ、プロポーション、配置とそのつながりによってつくりあげ、さらに、木の建具、レンガの床、突板の壁、ベージュの壁などの具象的なテクスチャーで仕上げた。そうして立ち上がった空間は、抽象性は担保しながらも個性がある、まるで邸宅を改装したような空間の質もったギャラリーとなっている。

The interior design of Tomio Koyama Gallery that is one of the most famous contemporary art gallery of Japan. The space has the warmth that fits the character of Mr. Koyama and is able to give a story to the exhibition. Concrete materials: wooden fittings, bricks floor, veneer wall, the beige-colored wall and etc are combined by minimum details. This gallery has the individuality as well as the abstractness as an exhibition space and has the atmosphere of space just like a refurbished mansion museum.

小山登美夫ギャラリー / Tomio Koyama Gallery

Date : 2016.10
Type : Art Gallery
Location : Minato-ku, Tokyo
Floor : 158.51㎡
Contractor : ISHIMARU
Photo : Takumi Ota
Press : 新建築2017年6月号, japan-architects ブログ
Award : 3M施工事例コンテスト2017 入選

那須塩原市黒磯に提案したまちなか交流センター・まちなか交流広場の計画案である。「人と食を育む まちの学校」をテーマに、3つの広場と小さな部屋が集まった細長い縁側により、誰もがいつでも使える居場所、那須地域の食を中心とした多様な活動の受け皿をめざした。3つの広場はそれぞれ、石の広場(半屋外)、木の広場(屋内)、芝の広場(屋外)とし、各々の独立と連携、縁側空間との接続により、大きな賑わいをつくると同時に、その一角に人が少なく落ち着いた雰囲気の場所をつくることができるようになっている。

NASUSHIOBARA CIVIC CENTER PROJECT

Date : 2015.11
Type : CIVIC CENTER
Location : Nasushiobara, Tochigi
Floor : 1500㎡
Collaborater: Office of Shinichi Tokuda
Consultant : RYOTARO SAKATA Structure Engineers
Image : mtka, Office of Shinichi Tokuda

青森県立美術館で開催された『化け物展』の会場構成デザインである。青森県立美術館は、レンガを積んで白く塗った外壁、白と茶が目まぐるしく展開する展示室をもつ美術館である。手がかりとしたのは、青森県美を「化かす」こと。外壁に使用しているレンガを3倍の大きさのダンボールに化かし、それらをさまざまに組み上げることで間仕切り壁や展示台、結界などをつくっている。さらに、白と茶というハイコントラストな展示室に呼応し、かつその特徴を増幅するように、ダンボールレンガを白と茶で3面ずつ塗り分けをした。お化け屋敷の空間をイメージして、一筆書きの動線と作家ごとに小分けにした空間の連続により化け物(作品)が突如現れるかのような構成としている。

The exhibition space for Aomori Museum of Art exhibit “BAKEMONO,” loosely translated as goblins and spooks, was produced by stacking 1800 cardboard boxes that were mutated into giant bricks three times the size of the actual ones in the museum’s exterior wall. The cardboard bricks were painted white or brown on every three sides and laid in brickwork to serve as partitions walls, display tables and barriers. The rooms were set up so that the goblins and spooks of the collection would emerge from the dark one after another.

化け物展

Date : 2015.8.1-9.13
Type : Exhibition Space
Location : Aomori Museum of Art
Floor : 1,364㎡
Photo : Mako Kakizaki
Press : 新建築2015年10月号

ファッションブランドの自社オフィスビルの計画である。敷地近くのRCの高架が街に強い印象を与えている。高架の強い印象、そのゆるぎのない質を受け継ぐようなビルを考えた。構造は、RCラーメン構造の3階建てとし、長方形平面を4本の柱で支えている。柱は上に行くにつれて細くなり、平面も少しずつオフセットして小さくなっていく。さらに、柱間を結ぶ梁のメンバーと取りつく位置と腰壁の高さを層によってずらしている。外壁と柱梁からなる緩い入れ子の平面が、柱、梁、腰壁の微妙なずれによるスケールの操作により少しずつ変化していくビルである。

A BUILDING PROJECT

Date : 2015.4
Type : Office
Location : Shibuya-ku, Tokyo
Floor : 196.70㎡
Photo : mtka

「更新するベーシック」をキーコンセプトに掲げるファッションブランドWORLD BASICSの展示会場デザインである。イニシャルショップの提案を求められていたことから、ショップの計画のモックアップとして展示会場をデザインした。 昨今、ファッションブランドは専用の店舗を持つだけではなく、ポップアップストアなどの期間店舗やセレクトショップへのコーナー展開など販売形態は多岐に渡っている。 そこで、どの場所や販売形態でもブランドのアイデンティティを持ちうる1つのボックス(600×450×300)のみで構成する店舗を提案した。時期や販売形態に合わせて、ブランドスタッフ自らが、レンガを積み上げるようにさまざまな組み方をして、間仕切りや平台、カウンター、フィッティングルームまで、ショップを形成するすべてをつくりあげることができる、流動的インテリアの提案である。ボックスのジョイントはマグネットを使用している。パテと塗装で見えなくしたスチール部(皿ビス)にマグネットを取り付け、アルミの目地材をはめ込み、積み上げる仕組みとなっている。展示会場ではボックスと同サイズのダンボールを使用して架空のイニシャルショップをつくっている。

WORLD BASICS 2015 AW EXHIBITION

Date : 2015.3
Type : Exhibition Space
Location : Minato-ku, Tokyo
Floor : 300㎡
Photo : mtka
Press : japan-architects ブログ

3人家族のためのアトリエ併設住宅である。プランは、910モジュールを基本とした6,460mm×5,460mmの平面の真ん中に階段を置き、その片側に壁を設け部屋を分節する、という至極単純なものになっている。だが、ただそれだけでは退屈なものになるため、その平面を1階と2階でくるりと反転し、同じ2つの平面が上下にひねりをもって現れる構成とした。テクスチャーは、建売住宅で一般的に使われている物の使い方と扱い方を少し変えている。外壁は下見板調のサイディングは耐力壁を黄色、非耐力壁をグレーに張り分けし、正面左のコーナーだけ飛び出させる。屋根はFRP防水をパラペットの外側まで包む。窓は枠だけ隠れるようにガラスのサイズに合わせて内壁に穴を開ける。床のタイルカーペットは壁に反り上げる形で納める。仕上げに美術作家である施主がこれらのさまざまなきっかけを読み取り、色を入れていく。 こうした判断はすべて建売住宅の凡例の内側にある。そこに迷いや意図はない。だからあらゆる成り立ちに意味が付着しないある種の健やかさをもった家となっている。可笑しなものが心地よく氾濫し、おまけに周りを少しだけ元気づかせる、そんな「明るい」家である。

An atelier-cum-home built for the contemporary artist Keisuke Yamamoto of Tomio Koyama Gallery. The floor plans of the first floor and the second floor were merely reversed to achieve a simple composition. The bare space born out of such the layout became the canvas on which the owner painted artwork; he colored the walls and ceilings and furnished the furniture; and Yamamoto’s “happy house” was completed.

ペインターハウス / Painter house

Date : 2014.9
Type : House
Location : Sagamihara, Kanagawa
Floor : 70.56㎡
Contractor : JOW corporation
Photo : Shinkenchikusha
Press : 新建築住宅特集 2015年6月号, art4d No.221, LiVES vol.79
Award : 東京建築士会住宅建築賞2016 住宅建築賞, 第59回神奈川建築コンクール住宅部門 優秀賞, ニチハサイディングアワード2016 入賞

母娘のための別邸である。敷地は南北に長く北側前面道路から1.2m上がった場所で、北側は向かいの家の生垣が激しく生い茂り、南側は琉球アサガオが絡むフェンスに囲まれた児童公園がある。そこで南北の耐力壁を二重(構造用合板+105角柱+構造用合板+105角柱+構造用合板)にし、壁倍率を7.5倍(2.5倍+5.0倍)とすることで大きな開口を開けた。そして二重壁の内外で開口形状を変えることで、北側は横2.2m×縦3.6mの大きな窓を、南側は直径2mの丸窓を設けた。これら南北2つの特徴的な窓をもった階段室と南室に挟まれた約4m角の立方体の広間。この広間を通常の暮らしとは少しだけ違う幾ばくかの高揚感を得られる空間とし、サロンや音楽室などに使用する。 外観は壁も屋根も雨樋も赤。それは周辺の緑に対して補色の赤であり、別邸であることの特別感としての赤であり、古い町並みに馴染むための赤である。この赤い家が慣習的な風景に変わりつつある街にいい影響を与える。そんなストーリーを想い描いている。

A secondary house for a mother and a daughter. The site is in an old castle-town in Osaka. On the north side there are garden trees across the street and on the south side there is a children’s park. So we proposed the large window on the north high side and the circle window on the south high side. We can get an uplifting feeling in the main room – 4m cube – sandwiched by the stair room and the south room. All exterior elements are red. Red is a complementary color to the surrounding green and fit the house in the castle-town.

赤い別邸 / Red house

Date : 2014.10
Type : House
Location : Toyonaka, Osaka
Floor : 71.10㎡
Consultant : RYOTARO SAKATA Structure Engineers
Contractor : Shintoukensetsu
Photo : Yasushi Ichikawa
Press : 新建築住宅特集 2015年6月号, art4d No.221

渋谷ヒカリエの8/ ART GALLERY/ 小山登美夫ギャラリーで開催された建築のグループ展「happy talking」の展示作品です。

*展示について –建築とアートの境界を行き来する–

建築の展示とはどうあるべきか?現代美術のギャラリーで行う建築展はどうあるべきか?コマーシャルギャラリーで建築家が展示を行う意味とは?これらのことを出発点に、模型や図面、竣工写真で建築そのものを説明するという従来的な建築展ではない、この場所ならではの建築展のあり方を模索しました。 まず、私たちが日頃扱っているものの中で、自立したオブジェクトになり得るものとして、模型を展示することにしました。3つの小さな住宅の1/30模型は、敷地や周辺環境といった条件の説明を削ぎ落とし、モノとして見せることにしました。そして、それらの3つの住宅をモチーフに、「N邸」は杉戸洋さん、「赤い別邸」は桑久保徹さん、「オイルハウス」は山本桂輔さんに絵を制作していただきました。それらの絵は、私たちでは気づかなかった建築の一面を見せてくれたり、これまでなかったイメージを沸かせてくれたりしました。きっと観る人は模型の世界と絵の世界を行ったり来たりすることで、何かに気付き、理解を深めていけるのではないか。従来的な表現方法では難しかった、建築のモノとしての質や空間の質を伝えることにもつながるのではないかと考えました。 今回展示した絵と模型はプライスを付け、販売を行いました。さらに、手のひらにちょこんと乗るサイズの精密な1/300模型を3Dプリンターで製作し、気軽に購入できる価格で販売しました。 建築とアートをセットで展示し販売すること。このことによって、建築展の一つのあり方を提示し、建築とアートの距離を少しだけ縮めることができたとしたらうれしいです。

*3つの小さな住宅について

展示している3つの住宅は、延床面積70㎡、木造の2階建てという小さな住宅です。これらの住宅は、共通して「同じものが2つあること」から設計がスタートしています。 「N邸」はシンメトリーな平面と断面を持ち、全く同じ2つの部屋をつくることで、機能に束縛されない自由な空間をつくっています。「赤い別邸」は、向かいの家の豊かな緑を取入れるために正面には大きな四角い窓を、裏の公園側には光と風を取入れる丸い窓を開けています。それらの2つの窓際に挟まれた部屋は、守られ落ち着いた居場所になっています。「オイルハウス」は、階段で2等分した矩形の平面を、1階と2階で反転させ、それら2つのフロアを行き来することで広がりを感じられるようになっています。 小さいことは不自由なことではなく、むしろ濃密で豊かなものになりえるのではないか。今、私たちはそんなことを考えています。

happy talking

Date : 2014.4.16-28
Type : Exhibition
Location :8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery , Tokyo
Promoter : Tomio Koyama Gallery
Photo : Kenji Takahashi, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
Press : architecturephoto.net, japan-architects ブログ

郊外住宅地のとある丘の裾野近くに建つ住宅である。敷地の西には静かな住宅地が丘の上に向かって広がり、東には谷に沿って幹線道路が走り、遠くまで見通せる。東西ふたつのリビングには3方に連続する窓がある。その窓から、両側の風景や音、空気感を家の中に採り込みないまぜることで、どちらの世界とも異なる、この場所ならではの自由な雰囲気をつくっている。この家は平面も断面もシンメトリーになっている。エントランスもベッドルームもふたつのリビングもまったく同じ広さだ。そのため、冬は西のリビング、夏は東のリビングというように、季節によって居心地よい場所に生活の中心を移動する。おのおのの行為に適切な広さの空間を与えるのではなく、複数のスペースとそのつながりを設計することで、自由な使い方が発見されている。この住宅では、シンプルなプランの中に、建築とその周辺のあらゆる要素をバランスよく存在させることで、自由で心地よい空間をつくることを試みている。

It is a house built on the foot of a hill in a suburban residential area near Tokyo. On the west side, a quiet dense residential area spreads toward a hill top. On the east side, the trunk road is running along the valley, so you can see a distance. The house has two living rooms on the east and west side of the second floor. The both living rooms have consecutive windows in three directions. From the windows, you can see the sceneries, hear the variety of sounds, feel the different atmosphere, and they are mingled together. It makes the place a totally different world from outside world. In this house, the plan and the section are symmetry. The entrance, the bedroom, and the two living rooms are completely the same size. Therefore the resident can create a new way of life there. For example, the center of the life is shifted to comfortable place in the house according to seasons, such as the west living room in winter and the east living room in summer. In this simple planning, we expect that the house and the surroundings exist with balance which the resident feels comfortable.

N邸 / N house

Date : 2013.3
Type : House
Location : Kawasaki, Kanagawa
Floor : 78.30㎡
Consultant : ladderup architect
Contractor : Kumai Shouten
Photo : Shinkenchikusha
Press : 新建築住宅特集 2013年7月号, TOTO通信2014年春号, JA 94